なぜワタナベか

ミセス・ワタナベが世界を震撼(しんかん)させる」−なとどいった流言が金融市場に流れている。ミセス・ワタナベとは日本の"小金持"の主婦層の総称。日本の主婦層はここ数年、株や投信に小口の投資をしており、その額は20兆円に上るともいわれる。
時代を読む:嶌信彦の「眼」 米国住宅バブルとミセス・ワタナベ

件の業界では普通に使われていることばだとかで、グーグルサーチでトップにくるのはたとえば

When currency markets gyrated to the hollering over carry trades at the end of February, Mrs Watanabe ― the housewife who represents an increasingly yield-hungry breed of Japanese individual investor ― used the yen’s temporary jump to top up on foreign currency-denominated assets.
Mrs Watanabe and the carry trade’s comeback
This entry was posted by Gwen Robinson on Tuesday, April 17th, 2007 at 8:28

語源はあるのだろうか、とちょっと探してみたが、数億の脱税で捕まった主婦の名前だ、とかあまり信憑性のない説明があったが、どうなのだろうか。

日本人の苗字に関してドイツ人と話していて面白いな、と思うのは日本の母音の多い名前を彼らが耳にするとなにやら厳かに聞こえるという彼らの説明である。たとえば「クロサワ」というと有名な映画監督だから、「タケミツ」というと優れた現代音楽家だから、といった理由ではなく音そのものがなにやらとても神秘的かつ厳からしいのである。「ワタナベ」という四つ母音に濁音までついているこの名前、とても日本人ぽいって感じなんだろうなあ。
逆をいえば、日本人はドイツ人の名前たとえば「ベッケンバウアー」とか「シューマッハー」とかを耳にするとなにやらとても格があるように聞こえているのではないか。少なくとも私はドイツ語を習う前には「ベッケンバウアー」という名前の音になにやら奥深いものなぞを感じていたものである。「シューマッハー」なぞ、いかにも速そうではないか。でもその実ベッケンバウアーの意味は「桶職人」だしシューマッハーの意味は「靴職人」である。そういえばシュバインシュタイガーというドイツ代表のサッカー選手もいる。彼の名前もいかにもすごい感じの音だが、その意味は「豚追い」(ちなみにこの意味にドイツ人は大いによろこんでいる)。意味がわかってしまうと音の神秘性がなにやらパラパラとはがれおちる。

スキがない

一週間前にイランから渡独したというイラン人の黒帯と乱取りをした。イランといえば空手が国技かというほど空手が盛んな国だとは聞いていたが、まあ、凄かった。最初から組んで廻し蹴りの基本練習などしていたときから、180度開脚を楽々こなすは、蹴りが私の頭上を軽々越えるは、でタダモノではないと思っていたのだが、いざ面するとスキがない。スキがない、という武道でよくつかわれる言葉を実のところ私は心底感じたことはなかったのだが、スキがない。それによき気づかぬ最初の三合で横蹴りを決めたものの、そのあと腰を構えなおしたこの男にどうしても打ち込めないのである。構えたままステップをいろいろ踏んでいるものの、どこにうちこんだらいいのやら、というよりもタイミングないし気がどうしても合わない。踏み込めないのである。ヤケクソにまた蹴りでもいれようか、と思ってもその刹那にはこちらのステップがしどろもどろになってしまう。こちらの動きを読んで間合いを即座に調整しているらしい。そうこうしているうちに、スッというかんじでこちらのリズムを完全に外すような感じで向こうから打ち込まれている。ああ、これが武道か、と心底思った瞬間だった。ちなみに彼も生物の研究者なのだそうだ。