教育再生のパラドクス

教育基本法が改定されたのを受けて、下位法がじわじわと制定されつつある。
教育関連3法案、衆院通過 午後の本会議で

可決されたのは、文部科学相教育委員会への指示・是正要求権を与える「地方教育行政法改正案」▽副校長や主幹教諭を新設する「学校教育法改正案」▽教員免許に更新制を導入する「教員免許法改正案」の3法案。

教員免許を更新制にするというのは、教員に対するコントロールを強めて教員のクオリティをあげようという工場の管理のような発想なのだけど、このことはそもそも教員になる人間が減少しているのに、それに輪をかけるような圧力をかけてどうするんだね、というのは前に書いたのだが(『現場の枯渇』『教員免許の国家試験化 』)、更に志望者の質を下げることになるだろうという話を苅谷さんがしている。教育再生のパラドクス、と苅谷さんは指摘している。

この趨勢が、現実をある程度反映しているとすれば、そして、それが今後も続くとすれば、この分析結果が意味するところは、教育再生会議の議論にとっては皮肉な結果といえる。教員の質を高めるために、厳格な評価と免許更新制を導入し、「不適格教員」を排除しようとする。ところが、その意図を裏切るかのように、こうした教員への厳しい社会のまなざしを忌避し、教員を志望する若者が減っていく。その結果、教員をめざす学生の「質」が低下する。しかも、教員採用倍率は今後も低下することが見込まれ、採用のところでふるいにかけようにも、その選抜自体が十分働かなくなる。質の低下を伴って、大学入学と教員採用の二つの関門が大きく開いてしまうのである。
この国の教育にいま、起きていること 第六回免許更新制と教員受難のパラドクス
苅谷剛彦