性において自由と強制はその限界を明確にするだろう。

永井和さんの『日本軍の慰安所政策について』の「おわりに」を読んだときに、この部分だけ妙にあらっぽいな、と思った部分があった。

国家と性の関係は現実に大きく転換したが、売春=性的労働を「公序良俗」に反する行為、道徳的に「恥ずべき行為」であるとする意識、さらに慰安婦を「醜業婦」と見なす意識はそのまま保持され続け、そこに生じた乖離が上記のような隠蔽政策を生み出すにいたった。慰安婦は軍・国家から性的「奉仕」を要求されると同時に、その関係を軍・国家によってたえず否認され続ける女性達であった。このこと自体が、すでに象徴的な意味においてレイプといってよいだろう。

最後のところでいきなりレイプか、間の説明が不足している、と思っていたんだけど(前にもそれを”無理な部分がある”と私は書いた)、その説明が昨日の記事にあるように思う。丁寧な腑分けだ。私見にしたがって以下に引用する。

公娼制度のもとで娼妓に売春をおこなわせることが、合法か否か」と「公娼制度のもとで娼妓に売春をおこなわせることは、強制売春か否か」とは、別の問題である
・・・
システムとしての慰安婦制度が「自由売春」と言いうるためには、「強制売春」を禁止する風俗行政上の強い規制がなければならないのです。そうでなければ、「自由売春」制度とは言えません。
・・・
たんなる売春の公認だけでは、「自由売春」制度にはなりません。売春を正業と認め、強制売春禁止法、人身売買・人身取引禁止法、強力な売春婦(sex worker)保護法と保護のための行政措置がとられなければ、たんなる売春の公認は、ほぼ必然的に強制売春の横行にいきつきます。それが人類の歴史の現実です。

投稿5 公娼制度は事実上の強制売春か、否か
投稿6 従軍慰安婦は自由売春制度ではありえない。
 
永井さん 掲示板『「強制売春説」など』から

場を乱すようで申し訳ないのだが、私はこの明確な説明は援助交際に関しても適用されるべきではないかと思う。少なくとも「彼女たちは終わりなき日常を生きる術を見につけているのです」的なあいもかわらぬ女衒問答に少しは輪郭を与えるのではないかと思う。すなわち性において自由と強制はその限界を明確にするだろう*1

*1:rnaさんへ 法というドライな線引きからみたときに、ということです。