ドレスデン

旧東ドイツ、その前は栄華を極めたドイツの都ドレスデンを訪れるのはこれで3回目になる。最初は複雑系研究所に出かけて行った。前回・今回は学会。大規模で広範囲な学会なので、講演を拝聴するよりも人に会って話すのがメインのアクティビティになる。街の印象は道の幅がとても広く、暗い感じの建物もすべて大ぶりで、「共産圏」というと私にはこの街の様子を思い出す。夜道をあるいているとなんとなく陰鬱とした気分になるドレスデンだが、なによりも好きなのが和食屋さんで、ヒルトンホテルの中にある「レストラン小倉」。最初にドレスデンに行ったときに突然ウニが食べたくなって探し回り、たまたまみつけて見事なウニの酒蒸を食べながら深酒、閉店後そのまま店長と飲みに出たのが始まりなのだが、ともかくも飯がうまい。ドイツ内の和食屋は数あるものの、知る限りうまいといえる店はこの店ともう一軒だけである。
いろいろ感激することがあるのだが、特にひとつあげると漬物の盛り合わせ。京人参をわざわざ空輸で取り寄せて漬けているというのだから頭が下がる。今回は滞在中昼飯は毎日「レストラン小倉」。毎日4人ほど引き連れて昼飯。本当は夕食も毎日行きたかったのだが、会議兼ねての夕食が詰まってしまって、最終日にしか行くことができなかった。残念無念。しかも一人で行ってカウンターで飲みながら刺身や惣菜をいろいろ食べさせてもらうというのがこの店の快楽なのだが、このところ学会のたびに夜ともなると、おもしろいことがあるに違いない(ろくでもないことが多いはずなのだが、よい飲み屋を発見するカンについてのみ信頼されている)、と私の都合に関係なくついてくる常連がいるので、ドイツ人・日本人・フランス人・ベネズエラ人・ロシア人・コスタリカ人をぞろぞろ連れての飲みとなった。うち日本人は学部時代からの友達でありかつ美女であり、時に学会で居合わせるたびに二人で飲むのを私は大いに楽しみにしている人である。今回もそのはずだったのだがかくなる我が飲み会メンバーが追随してきたので、あー、宴会部長かよ、と少々不機嫌になりながら店に赴いた。そんな私とは裏腹に店長は雑多なメンバー構成に大喜びで、店を閉めた後にカラオケ大会を催してくれた。ロシア人がカチューシャをがなったあとで店長は「あずさ二号」を絶唱といったなんともすごいことになっていた。盛り上がった我々、そのまま店長も含めて飲みに出かけ明け方まで。私は予約していた朝の特急を逃してしまった。