モンゴルに二週間いっていたフランス人がウォッカを買って帰ってきた。冷凍庫でギンギンに冷やしたモンゴルウォッカ。ベルギー人とイギリス人と私のコップにトロトロとウォッカが注がれる。いいかしら、これはモンゴルのウォッカなのよ、はるばるモンゴルから持ってきたの、と彼女は真剣な目つきで我々にいってきかせる。でも能天気な我々は、わはは、モンゴルか、飲むぞー、モンゴル語で乾杯ってなんていうんだ、いやはや、などなどととりあえずコップを開けてしまう。うまい。凍るほどに冷やしたウォッカがまずいはずがない。いやー、うまい、と我々三人は口々に感想を述べる。でもどこがモンゴルなわけ?ただのウォッカだよこれ。私は不躾にも反問する。そのウォッカの瓶さえも、どことなくキッチュで、タカラ焼酎の瓶のようなデザインなのだ。ちがうのよ、買った場所がすごいところなの。なにもなくて地平線がみえるだだっぴろい草原のど真ん中にぽつんと一軒だけあった店に売っていたウォッカ。モンゴル人はこれを草原に座って飲んでいるのよ、私も草原で毎日飲んでいた。だから違うの。