西へ

イタリアから帰って48時間おいてノルマンディに小旅行。夜中に寝台車に乗り込んで朝7時のパリについた。ノルマンディに向かう汽車まで一時間ほど時間があったので駅の外にでて通勤客の雑踏を眺めながらコーヒーにタバコ。下に寝ていたおばさんの鼾がすごかったので、なんとなくよく寝れなかったこともあり、頭に霞がかかった状態。通勤にいそぐ群衆の眺めはそう東京と変わらない。そんな風景をぼけっとみていたら、通勤の雑踏を離れて女性がひとりハイヒールをツカツカと響かせながらまっすぐ私に向かってやってきた。目が強く美しい。よよよ、とちょっとあっけにとられて、なにを彼女が言い出すのかと思ったらぶっきらぼうに「タバコちょうだい」。寝ぼけたあたまで、は?とか思いつつなんか気をのまれて一本渡してしまった。どこの町にいっても、タバコをくれ、と通りすがりにいわれることがある。とはいえ、無料でやるのもなんなので、面白いネタでアプローチしてこないかぎり、通常は無碍に断ることにしている。前回は、ボローニャの街角で一ブロック向こうから「タバコがほーしーいー、あタバコタバコ」と浪々と見事な声で歌いながらやってきて私の前に立ったオヤジに一本プレゼントした。今回はしかし敗北である。
ノルマンディでは知人の家。漁師のところにいって鯛を買ってきて刺身をつくったり牡蠣を料理したりした。窓からみえる海を眺めながらさんざん食い倒し、食べていないときは寝てるか読書。