日本の『科学技術基本政策策定の基本方針(案) (パブリックコメント募集文書)』
上記パブリックコメント募集中なる日本発の回覧が回ってきたので、募集文書本文を眺めてみた。すごく複雑。ここにはかかれていない暗黙の了解コンテクストがあるのだろう。なによりも未だに国家総動員体制でしか政策立てられないのだなあ、という政策立案者の限界を感じた。戦争は終わっていない。…と考えるのは昨日笠井潔の『例外社会』を読み終わったところで、頭がそっちに染まっているからかもしれない。
他の国家を超えるような科学政策を目指すのであれば、徹底的かつ戦略的にオープンで国家に閉じない形態を目指すのがよいだろう*1。科学の本分は国家に閉じないインターナショナルな理念にあり、その王道に沿って政策を立案すれば、いまや世界の先進各国が推進する、あまたある各国の科学技術重視政策 − いずれもそれは国家に閉じられ、国外との交流はインプット・アウトプットとして立案される限界がある − の水準を越えることが可能になる。
ディテールに関して私個人の生活上の立場から気になる部分。育児は女がやるわけね、というか。男も育児するんだぜ。結果として以下の案は育児を「女性研究者」だけに押し付けているともいえるだろう*2。
? 女性研究者の活躍の促進
○ 我が国の女性研究者の割合は諸外国と比較しても未だ低い状況であり、 女性研究者の一層の活躍が求められている。男女共同参画は、国是であ るのみならず、女性の持つ優れた潜在能力を解放し、我が国の中長期的 な発展を図る上でも極めて重要な鍵を握っている。とりわけ、研究開発 の領域では、女性ならではの視点、目線からのアプローチが、新たな価 値創造につながる潜在的可能性は高いと言える。
○ このため、女性の採用に関する数値目標の設定や、出産・育児等と研究 の両立を可能とする制度・体制の整備を行う。
・ 女性の採用に関する数値目標の設定と公表、実績の公表などにより、 各機関における女性研究者の登用及びその活躍を促進する。また、第 3期基本計画における女性研究者の採用目標の設定が大学及び研究 開発機関における意識を高め、実績を上げてきたことも踏まえつつ、 現在博士課程(後期)に在籍する女性の人数に照らし、次期基本計画 期間には、自然科学系の女性研究者の採用を 30%(理学系 20%以上、 工学系 15%以上、農学系 30%以上、医学系 30%以上)とすることを 目標とする。(P)
・ 出産・育児等により研究を中断する女性研究者の復帰と活躍を促進するため、女性研究者について、出産・育児等と研究を両立できるよう な柔軟な雇用形態・人事制度の確立、研究サポート体制の整備を促す。 具体的には、ライフサイクルに合わせた柔軟な評価や、育児中の女性 29 の教育負担の軽減、保育サポートなどの取組を行う
上記文書は以下のリンク経由でアクセスできる。〆切りは6月7日。
http://www8.cao.go.jp/cstp/pubcomme/index.html
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