某所にある社会保険局にいって彼女の死亡届をした。国民年金をマジメに払っていた人だったので、どのぐらい還付されるのかな、と思っていたのだが、300万円これまで払っていて、遺族に支払われるのは死亡一時金なる12万円である。のこりの288万円はそのまま国のもの。ろくなものではない。あまりに腹がたったので、「詐欺ですね、これ」といったら係の人が絶句してもうすこしエライ人がでてきた。生命保険だって元本は補償されますよね、普通、といったら「国がみんなでやっている制度なので、ご理解ください」とのこと。国がみんなで、という言葉に”國體”というおどろおどろしい旧字があたまをかすめた。文句をいうならば、選挙で、とまでいわれた。まあ、そうだろう。

もし私が死んだ場合には、遺族年金なるお金がでて、毎年70万円だかが妻に支払われるそうである。しかし、私が生きていて妻が死んだ場合には死亡一時金12万円のみ。男だからどうにかなるでしょう、これで黙れ、ということだろう。私が主夫だったらどうしたらよいのだろうか。というよりも、いままで300万円を懸命払ってきた彼女がほんとうにかわいそうである。せめて子供をもうすこしサポートしてやれないものか。

ドイツの年金の場合、死んだ人間が65まで働いたと仮定して年金を推計し、その最大50パーセントが配偶者に支払われる。ただし、この最大の値は配偶者が無職だった場合である。収入がある場合、それに応じて減額される。子供は教育をおえるまで(就職するまで)推計額の一割が毎年支払われる。

日本では休むつもりだったがすさまじい量の事務処理であちらこちらに出向く必要があり、休んでいられなかった。死亡届からはじまるわけだが、なにしろ医師の診断書からしてドイツ語なので私が翻訳しなくてはならない。へとへとになってドイツにもどった。

[追記] コメント欄のみなさま

窓口の人みたいな方がたくさん出てきたので苦笑してしまいましたが、ヒトコト。悟性としては理解するが、理性として納得せず、という点をお察しください。”である”ことはかならずしも”であるべき”ではありません。特に夫と妻の待遇の差は解消されてしかるべきでしょう。いまどき終身雇用で安定収入の夫=世帯主なんてモデルは崩壊しつつあるのだから。