米国は戦争の続行を支持

昨夜(日曜未明)のレバノンの避難民に対するイスラエルの”誤爆”によって今日一日でさまざまな展開があった。
レバノン:イスラエル軍、南部を空爆 57人死亡 毎日

イスラエル軍は30日朝、レバノン南部ティールの南東約10キロの町カナの民間人居住区を空爆、住民が避難用シェルターに使っていた建設中のビルやモスクが破壊された。死傷者数についての情報は錯そうしているが、中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、子供30人を含む57人が死亡した。7月12日の紛争開始以来、一度の攻撃では最悪の事態となった。

カナの現場での生存者の証言は、ガーディアンの記事に詳しい。
'They found them huddled together'
ほこりにまみれた子供たちの死体が次々に運ばれる無残な映像が世界に流れた結果、イスラエルを糾弾する声が国際的に高まっている。ローマ法王でさえもが、即時停戦を要求する声明を発した
カナの悲惨な事件はこの一週間のめまぐるしい外交戦の流れの結果として起きたともいえる。重い腰をようやくあげて中東に飛んできたライスはイスラエルにとって大きなプレッシャーとなった。なんらかの”結果”を出さなくてはいけないからである。対ヒズボラレバノン)攻撃が始まってからすでに二週間以上たつにもかかわらず、ヒズボラが発射するロケット砲の数は一向に減少していない。ということはイスラエルによる空爆はあらたかな効果を発揮していないということになる。アメリカにとっても、支持国の「対テロリスト」の戦いが無効であるのは困った事態になる。こうしたことから先週の金曜に、イスラエル軍は攻撃地目標のリストの再検討を行った。それまでは市民に危害が及ぶ可能性が大きすぎるので除外されていた地域が新たなリストに加えられたのである。
イスラエル支持である米英がここでどう動くのかが注目されている。今朝(日曜)までイスラエルの閣僚と会っていた米国国務長官は予定では今夜にはレバノンベイルートに赴き、シニオラ首相と会談するはずだったのだが、カナの爆撃を受けてシニオラ首相は停戦の話以外は不可能である、とライスの来訪を断った。ライスは「予定を延期することにした」と説明しているが、事実上の門前払いである。朝方までにこやかにイスラエルの閣僚と握手を交わしていた人間とまともに話すことなど出来ない、というところまでレバノン側は感情的になっているのだ。シニオラ首相は今回の爆撃を”戦争犯罪”と呼んでいる。ライスが提示している停戦案は、トルコとエジプトを中心とするNATO軍が停戦監視、およびヒズボラ武装解除を行うというイスラエルの意向に沿う内容である。しかしながらこの案はシーア派スンニ派が武力で抑えるという非現実的な案である。こうした非現実性は、米国が今睨んでいるのはレバノンやヒズボラではなくイランである、という目的の違いから生じている。要するにレバノンテヘランに向けた踏み台なのである。
一方で英国のブレア首相は閣僚や議会からの猛攻撃にあっている。
Cabinet in open revolt over Blair's Israel policy
Cabinet concern over PM's stance
先日ブッシュとの立ち話がたまたまスイッチの入っていたマイクで世間に知れ渡り、「おいブレア」「なんでしょう」というブレアの弱腰ぶりが「ブッシュの忠犬か」と批判されていたこのところのブレアである*1
レバノンの惨事を前にしても米国追従をやめないブレアに対する批判は日毎に増しているところだった。BBCのインタビューを受けた今朝のブレアは憔悴しきった様子で「なんとか停戦にこぎつけさせる必要がある」と答えていた。
これら一連の一日の動きの結果、イスラエルはライスとの会談の後に48時間の攻撃停止の声明を出した。
Israel halts fire for Qana probe
ヒズボラからの攻撃がありしだい、攻撃を再開することができる、という条件がついているので停戦とは言いがたい。カナの誤爆の調査を国連と合同で行うという名目である。なお米国は即時停戦には合意していない。「テロとの戦い」はまだ終わっていない、ということなのである。また、この48時間のうち24時間を「市民の避難のための時間」と特に称している。後にカナへの攻撃を再開するつもりなのだろう。しかしながら避難民たちの目下の状況では逃げることができない。そもそも橋や道路が爆撃で寸断され交通の手段を失った人たちなのである。