ホンネ(対米従属)と建前(復興支援)の相克

連続する拉致脅迫に関しては、牧師の韓国人7人は即開放された。米軍と関係がないことが明らかになったから、とのこと。目下かの有名なパレスティンホテル(米軍が戦車で砲撃を加えて、ロイターのカメラマンが死んだホテル)にいる。パレスチナ人二名に関しては、要求はまだはっきりしない。日本人3名はMujahideen Brigadesに拉致されて引き換えに自衛隊撤退を要求。「さもなければ生きたまま焼く」。

昨日はアトランタ空港で不審物が発見され、全員退去、ということだったが、今日はパリの地下鉄にテロの危険、とCIAからパリ当局に連絡があり、全員退去。

一気に反占領側が動き始めた。米国は逆立ちして戦略転換をしなくては先行かない。テロに負けない、という構図は、通行人に一々刃をつきつけて、「オレを殺すな」と訴えて回っているのに等しい。返り討ちにあわないほうがフシギである。そうではなくて、イラクにとってなにが一番よいことなのか、を考えることだ。ブッシュが失政は認め、国連統治に向けて第三国で緊急の会議を招集すべきだ。日本政府は国連への全権移譲を求める、という形で取引をしたらいい。

それにしても、拉致された人間の職業・滞在目的の多彩さは実に示唆的だ。個人の考えていることがどうであれ、日本人は一歩外国に出れば、たとえ反戦どころかシーア派万歳とさけぶ人間であっても、ザ・日本人、なのである。コイズミおよびその一味のイラク侵略決定の結果としてザ・日本人がナイフをつきたてられている。

我々、イスラム教のイラク国民は、あなたたちと友好関係にあり、尊敬もしている

 しかし、あなたたちはこの友好関係に対し、敵意を返してきた

 米軍は我々の土地に侵略したり、子どもを殺したり、いろいろとひどいことをしているのに、あなたたちはその米軍に協力した

 今、あなたたちの国民3人は、我々の手の中にいる

 そして、あなたがたは二者択一をしなければならない

上の引用は誘拐犯人グループの声明の一部である。私にとってはコイズミが勝手に決めたこと、敵意を返したのはコイズミなのだが、おかげさまでこの”あなたたち”、の中には私も入っているわけだ(あなたが日本人ならば、あなたも)。私は一年ほどまえまでは、一行目の人間だった。しかし不可避的に日本人であることで、今や二行目の人間としてみなされるのである。イラク侵略に日本が参加したことの現実的な意味がここにある。
官房長官は「イラクの復興にいったのになんで?」と子供のように勘違いなことを述べているので私は苦笑した。あるいは退行現象か。思考停止である。ナイーブな子供のふりをする大人。このバカげた発言が世界中を今,駆け巡っている。このいかにも日本政治家なコメントで、テレビを眺めている日本人はこれまでどうり騙せるかもしれない。が、世界はだませない。ましてや今晩も米国のヘリの爆音と銃撃におびえ、怒るイラク人をや。「日本はアメリカのグルカ兵」としか思っていないのである*1。「お前も血を流せ」とアーミテージに要求されたアメリカの属国がどうするのか。それを世界が注視している。

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はてな周辺での反応は、読者さんがまとめられています。
自作自演だ、と主張する2ちゃんねる型妄想症候群の人間、結構多くてオドロイタ。

*1: id:o-tsukaさんから次のようなコメントを頂いたので引用します。『一瞬、気の利いた台詞だなぁと思いましたが、これはちょいとグルカにアンフェアじゃなかろうか。▼グルカ兵とはイギリス軍(植民地軍)に組み込まれたネパール人の外人部隊です。▼中印の二大国に挟まれた貧乏国のネパールが、今まで独立を守り続けられたのは彼らの功績が大であるといわれています。▼勇猛果敢なグルカ族(現地語では「ゴルカ」と発音するらしい)は、かつてはイギリスの侵略軍に痛打を与え、その後一転して英軍インド兵が起こした「セポイの乱」鎮圧に手を貸して大英帝国に恩を売りました。▼その後、イギリス軍の傭兵として香港などの植民地に駐留し、両大戦ではイギリス本国を敵の手から守り、二次大戦では大日本帝国軍とも激しく交戦しています。戦後も、イギリス軍の赴くところには必ず彼らの姿があるといいます。日本はアメリカと戦った後に従属した点は似ていますが、どちらかというとアメリカの背後を守っているわけで、イギリスの前を守るグルカとは位置が反対です。▼漫画では吉田秋生の『YASHA』に登場するジャヌーというジャン・レノそっくりなキャラがグルカ族出身です。でも最新作の『イブの眠り』では1コマのみの登場というひどい扱いに……。(id:o-tsuka:20040409#p2)』