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The Future of Iraq
一昨日アップされた、「世界システム論」のウォーラーステインのイラクに関する時評。2001年9月11日以来この人の発言は妙に陳腐になって普通のジャーナリストのようになってしまっているが、今回もそうだった。歴史の俯瞰はうまいけれどそのせいで逆に慎重になりすぎているのだろうか。一般的な解説に終始している。スンニとシーアの対立に関するもうすこし踏み込んだ展望が彼ならできそうなものだが。
Rumsfeld in Denial
上のウォーラーステインの時評に引用されていた、ウェストポイントの教授がウォールストリートジャーナルに11/30日付で寄稿した記事。1991年の湾岸戦争で自ら第24機甲化歩兵師団を率いた将軍でもある。ラムズフェルドによるイラク侵略作戦がいかにダメダメな結果にたどりつつあるかをこの戦争専門家が説いてくれている。要約すれば、米国軍事力を出し切る状態が近々到来する、という内容。兵站は伸びきり、兵員は予備役兵の呼び出しを含めて目一杯の状態、来年の夏までには交代要員が枯渇するという、戦略としては最悪の事態、という内容。なによりも、ブッシュやラムズフェルドが戦況を客観的に分析していない、という点を指摘。米軍は勝つことは勝ったがイラク側が負けたと思っていない、という一文は目下の状況の的確な表現だろう。
そもそもイラク侵略には反対していたベトナム経験者コリン・パウエルが、ネオコンに押されてしかなたく侵略を認めたときに、これだけは認めろ、とパウエルが提言したのは、ラムズフェルドのイチオシ、「21世紀の軍隊」を使った軽くて速い戦争をイラク戦では採用しないでくれ、ということだった。にもかかわらず、軍事に関してはハイテクオヤジの域を出ない低レベルのオタクである、ラムズフェルドは「21世紀の軍隊」に妄想を強行、速攻戦を無理やり押し通した。速攻戦で一国を占領するのは不可能である、とあまりにもわかりやすい批判をパウエルは何度も繰り返したのにもかかわらず、である(だからパウエルは正しいというわけではないが、イラク侵略に抵抗したパウエルは正しかった)。ラムズフェルドの妄想が現実になった。ラムズフェルドの家のビデオライブラリーにはスタローンとシュワルツネッガーがもれなくそろっているのではないか、と余計な邪推まで私はしてしまう。イラクに関するさまざまな判断は、妄想と都合のよい解釈によって決定されているのだろう。パウエルは軍人であり、軍人として現実的な意見をいうので、軍の信頼を集めている。上の将軍もまたパウエル派だろう。
上記のブッシュ政権の政策決定仮定のちゃらんぽらんさと我田引水についてはアジアタイムスの次の記事が参考になる。アジアタイムスってどこが中心になってやっているんだろうか。最近知ったのだが、おもしろい論説がしばしば登場するようだ。注目。
US intelligence under the microscope
情報機関がブッシュ政権中枢部に上げる分析結果がいかにして無視され、都合よく解釈・取捨選択されているか、ということを解説している。次の記者会見の模様は特筆ものだろう。7月のことであるが、ホワイトハウスでの記者会見で、記者の一人が、国務省が大統領に提出した、政策に異議を唱える内容の報告書を大統領は知っているのか、と質問したのに対して、政府高官は「大統領の仕事は事実確認ではありません(The president of the United States of America is not a fact checker)」と答えたという。
この記事の著者はイラク侵略に限った議論をしているが、せっかくだったらベトナム戦争の時に、情報分析結果が都合よく解釈されていたか、ということも引用すべきであっただろう。あらゆる場面でイラク侵略はベトナム戦争における失敗の轍を踏んでおり、米国本国でも"Is Iraq another Vietnam?"という問いが繰り返されているからだ。
ベトナム戦争時とイラク侵略戦争における諜報・情報分析活動と米政権の関係についての比較は以下を参照。
Intelligence for What? Vietnam war reconsidered
by GABRIEL KOLKO[Link]
その他、イラク侵略はベトナム戦争の再来か、という問いは
ワシントンポスト記事
Is Iraq Another Vietnam Quagmire? No and Yes[Link]
Is Iraq another Vietnam[Link]
などなど。
一点留意すべきは、こうした論調はブッシュ降ろしの風が吹き始めたことによる、「ブッシュ後」を見越した米国の正当化の努力のようにも見えるとうことだ。ブッシュが消えたあとに「あれはブッシュが悪かったんだ」という禊を行うのだろう。